2018年、「童謡」が誕生して100年を迎えました。
「童謡」はお子様から、おじいちゃんおばあちゃんまで親子3世代、4世代で歌える日本の素晴らしい伝統文化です。
「童謡」は、元々は「読むための詩」として歌詞が先に作られ、その歌詞のアクセント(高低)に沿って、
あとからメロディが作曲されました。
そのため、日本語の抑揚にぴったりと合う形で作曲されています。
語彙が単純化し、アクセントやイントネーションなど言葉が乱れる現代、
「童謡」は【正しく美しい日本語の教育】として大変良い教材といわれています。
是非、「童謡」を通してお子さま方に「美しい日本語」を身につけて頂けたらと思います。
童謡に綴られた歌詞には、日本の四季折々の風景や情景、季節行事、家族の情愛、歴史、
また、自然を大切にし、生き物を思いやる優しい心や日本の心が歌われています。
童謡は文字通り「童(わらべ)のうた」であり、子どもが歌えるよう単純なメロディ&歌詞で作られていますが、
どの歌からも日本の優しさ、あたたかさ、作者の気持ち(感情)が伝わってまいります。
近年、音楽は「耳で聴く」より、「映像で見る」時代になり、
歌詞から情景を想像することができない音楽が多くなってまいりました。
様々な情景が浮かぶ「童謡」を通して、是非、豊かな感性を養って頂けたらと思います。
童謡の歌詞には、普段使わない言葉も出てきます。
例えば、『故郷』の「兎おいし」は「兎は美味しい」のではなく、「兎を追いかけて」、
『夏は来ぬ』は「夏が来ない」のではなく、「夏が来た」という意味です。
『茶摘』は、社会で「静岡がお茶の産地」と学ぶ時に、歌を思い出すことで、
実際に茶畑や茶摘みをする姿「茜だすきに菅(すげ)の笠(かさ)」を見たことがなくてもイメージができます。
「茜だすき」とは、茜の根で染めた赤いたすきのことですが、実は「茜」には意味があり、
茶摘みという指先に怪我をしやすい作業に際して、止血剤としてたすきの茜成分を擦り込みながら
作業を継続していたという先人の知恵が込められています。
歌の冒頭の「夏も近づく八十八夜」の「八十八夜」も、普段は使わない言葉ですが、
立春から数えて88日目のこと、5月2日前後のことです。
八という字は末広がりで、縁起が良く、
八十八夜に摘んだ芽で作った新茶を飲むと、その年は病気をしないといわれています。
『まっかな秋』の3番に出てくる「からすうり」は、見つけた時に子どもに教えることができたり、
『虫の声』には、松虫、鈴虫、コオロギ、馬おいなど秋の虫が出てくるので理科の勉強にもなります。
それから、現在、街角でのたき火は禁止されており、テレビやラジオから流れる事はほとんどありませんが、
『たき火』という歌を通して先人達の知恵を教えることができます。
震災などで電気が使えなくなった場合に、たき火は役立つのです。
このように、歌から知識が得られるのも童謡の魅力です。
歌に出てくる言葉を説明することで、語彙が増え、日本の伝統や文化、行事を知ることができるのです。
「童謡」は、日本語が美しいだけでなく、知らず知らずのうちに学びに繋がることがあり、
次世代に残したい名曲がたくさんございます。
どの歌にも作者が込めた思いやエピソードがあり、
そんな秘話も知って頂くと、大人も子どもも歌い方や歌に対する気持ちが変わります。
是非、多くの皆様に「童謡」に興味を持って頂き、日本が誇る伝統文化の素晴らしさを再認識して頂けたらと思います。
そして、口ずさんで頂く機会を増やして頂けたら嬉しく思います。
日々忙しいと、ゆっくりと音楽を味わったり、情緒を味わう機会を持つことが難しいと思いますが、
あたたかく優しい童謡の詩とメロディは、心が穏やかになり、「心の安定」に繋がるといわれています。
一日の中にたった5分でも、心を潤う時間を持って頂けたらと思います。
そして、歌を通して「家族の絆」を深め、これからの時代を担う子ども達に「豊かな人間性」を育んで頂けたらと思います。
「心の故郷」といわれる童謡。
震災や豪雨などの被害が起こってから「童謡」が見直される時代になり、各地にお招き頂くことが多くなりました。
「音楽は『命』を救うことはできませんが、『心』を救うことはできる」と思っています。
日本が誇る伝統文化「童謡」が被災地を元気にし、
次世代に歌い継がれていきますよう、私たちも微力ではありますが、これからも大切に歌ってまいりたいと思います。
童謡は『親』と『子』を結び、絆を深めるもの―
親から子へ、子から孫へと歌い継がれていきますように・・・